歯科では、むし歯や入れ歯の治療だけでなく、口内炎や口腔乾燥など、口腔粘膜のケアも重要な診療領域の一つです。口腔の粘膜には無数の小さな唾液腺があり、さらさらとした唾液を分泌しています。この唾液のおかげで、頬や唇が歯の表面にくっつくことなく滑らかに動き、食事や会話を楽しんだり、豊かな表情を作ることができます。
さらに、口腔粘膜は全身の健康状態を反映する指標にもなります。例えば、粘膜表面には多くの毛細血管が走っているため、健康な人の粘膜はピンク色ですが、貧血がある場合は蒼白になることがあります。普段はあまり意識されない口腔粘膜ですが、高齢になると汚れが溜まりやすくなり、病気の原因となることがあります。
今月は「口腔粘膜ケアの必要性」をテーマに、詳しくお伝えします。
経管栄養でも口の中は汚れる?
総入れ歯を使用している方や、経管栄養で食事を口から摂れない方について、「口腔ケアは必要ない」と誤解されることがあります。しかし、口腔粘膜には新陳代謝によって剥がれた古い細胞や痰などの汚れが溜まり、細菌が繁殖しやすい環境が生じます。
また、入れ歯を使用している場合は、入れ歯が触れる部分に汚れが付着します。さらに、麻痺がある場合は、麻痺側の口腔粘膜に食物残渣が溜まりやすくなります。
自浄作用が働かない…
通常、健康な人であれば、噛んだり話したりする際に舌や唇、頬が動き、その動きによって汚れが落ち、唾液によって洗い流される「自浄作用」が働いています。しかし、高齢者や要介護者の場合、噛む・話すといった動作が減少し、加齢や服用している薬の影響で唾液の分泌量が健常者の2割以下にまで低下することがあります。その結果、自浄作用が著しく低下してしまいます。
このような状態を放置すると、汚れや細菌が増え、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。したがって、歯の有無や食事の摂取方法に関わらず、口腔粘膜のケアはとても重要です。
唾液分泌量を阻害する主なお薬
以下の薬は唾液の分泌を減少させることがあります:
- ・消炎鎮痛剤
- ・抗うつ剤
- ・精神安定剤
- ・利尿剤
- ・降圧剤
- ・抗けいれん剤
口腔粘膜ケアによる効果
口腔粘膜のケアは、全身疾患の予防にもつながり、次のような効果が期待できます:
- ・誤嚥性肺炎の予防
- ・口臭の予防
- ・唾液の分泌促進
- ・口腔内の爽快感向上
- ・味覚や嗅覚の回復
専用器具を使ったケアのすすめ
口腔粘膜ケアにはさまざまなメリットがありますが、効果的にケアを行うためには専用の器具を使用することをおすすめします。健康な口腔環境を保つために、日常的なケアを心がけましょう。
ハローデンタルクリニックでは、様々な病気や体調に合わせた口腔ケア及び治療をしております。お困りごとがありましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。